医師の説明・説得義務
ある症状を訴えて来院した患者さんに対して血液検査を行ったところ、その病気とは別に他の病気も発病している可能性があったとします。医師はその旨を患者さんに告げて、精密検査を受けるように勧めますが、患者は頑として従おうとしません。そのまま時が過ぎて数年後、その患者さんが症状を訴えて病院に来たときには既に手遅れ…。
実際、こういうケースで遺族が医師を訴えるということがあります。医師が患者に十分な説明・説明義務を尽くしても、患者さんが検査を受けようとしない場合、それは医師の義務を超えて、患者自身の自己決定の問題となりますので、医師が検査の実施義務違反などに問われることはありません。
女医に聞いた結婚の高齢化で生じる出産リスク
晩婚化の傾向が強い日本ですが、自然妊娠、あるいは不妊治療が成功してようやく妊娠したとしても、それだけでは安心できないという話を知り合いの女医(産科医)に聞きました。40歳を過ぎての出産の場合、それ自体がかなり大変ですが、受け入れてくれる産院が少ないという事情が重なるためリスクが更に高まるとのことです。
どういうことかというと、高齢での初産の場合、産道が堅く帝王切開に切り替えるケースが多々あります。大学病院や総合病院のようなほかの科がある医療機関であれば、緊急手術用の輸血用血液や人員を揃えることはできますが、クリニックレベルでは難しいのが現状です。
さらに高齢妊娠の場合、内臓脂肪型肥満に高血糖・高血圧・高脂血症の二つ以上を合併するメタボリックシンドロームのリスクも顕在化してきます。また、加齢で染色体異常が起こって流産となったり、ダウン症のリスクも高まります。このようなリスクがあるため高齢出産の受け入れを嫌がる病院が少なくないのです。
また根本的な原因として、深刻な医師不足、特に産科医不足が挙げられます。今回の話を聞いた女医さんも連続48時間勤務をこなしていらっしゃいますし、72時間連続勤務の人もいます。このような過酷な状況を目の当たりにすれば、産科医を目指す医学生が増えないのは仕方ないことでしょう。単に医師を増員するのではなく、科の偏在化を是正する策が求められています。
勤務医の場合はオンコールがあるため、本当にリラックスできる休日は月に2、3回程度しかありません。そのため、結婚願望があっても、女医の婚活は大変です。同じ病院の男性医師ならその辺の事情はお互い様ですので、理解してくれると思いますが、一般男性は働いている医師像をあまり知らないため、「わがまま」とか誤ったイメージが定着してしまいがちです。